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アルツハイマーって、誰?

[2024.10.31]

みなさんこんにちは。

 

先月は認知症について、症状や検査などおおまかにお話してきました。

 

今月からは認知症の種類毎にご説明していきます。

 

今回は一度は聞いたことがあるでしょう、アルツハイマー型認知症についてです。

 

ところで「三大認知症」ってご存知でしょうか?

 

認知症の中で頻度が高いアルツハイマー型認知症血管性認知症レビー小体型認知症の三つのことを言います。

 

さらにそのうちアルツハイマー型認知症は最も頻度が高く、認知症全体の6割を占めると言われています。

徘徊するお爺さんのイラスト(認知症)

 

アルツハイマー型認知症とは?

この病気は今からおよそ120年前、ドイツのアロイス・アルツハイマー医師が重症の記憶障害をもつ50代の女性についての症例発表を行ったことに始まります。

 

その女性の脳には、通常は見られない奇妙なシミのような斑点があったのです。

 

このシミは「老人斑」と名付けられ、アルツハイマー型認知症患者の脳に見られる特徴として広く知られるようになりました。

 

その後、病気の研究が進み、今では「老人斑」=「アミロイドベータ(アミロイドβ)」というタンパク質が蓄積することで起こる病気と言われています。

 

アミロイドβは健康な人の脳でも作られるのですが、通常はゴミとして脳の外へ出ていきます。

 

しかし何かしらの原因で脳の神経細胞にアミロイドβがたまり、それが細胞を壊し脳が委縮することでアルツハイマー型認知症は発症・進行します。

 

認知症の脳のイラスト(アルツハイマー型)

 

実は認知症発症の20年以上前からアミロイドβは脳にたまり始めます。

 

加齢や遺伝、糖尿病などの病気が関係しているとされているものの、明確なことは分かっていません。

 

 

特徴的な症状

アルツハイマー型認知症はゆっくり発症して、ゆっくり進行していくのが特徴です。

 

必ずしもこの順番に症状は出現しませんが、一般的に以下のように症状が進んでいきます。

 

1. 軽度認知障害(MCI)

・新しいことを覚えられない

・同じことを何度も聞き返すようになる

物忘れをしたお婆さんのイラスト(認知症)

 

2. 軽度の症状

・年月日の感覚が不確か

・ご飯を手際よく作れなくなる、買い物で失敗する

・複雑な形を描くことができない

・無気力になる

 

3. 中程度の症状

・新しいところに行くと迷子になる

・物をしまったことを忘れて誰かに盗られたと言うようになる

・鏡に映った自分がわからなくなる

・計算や、時計から時刻を読み取りできなくなる

・大声をあげたり動きすぎてしまったり、昼夜逆転したりすることがある

・季節に不釣り合いの服を着るようになる

物盗られ妄想のイラスト

 

4. 重度の症状

・妻や夫、子供の顔がわからない

・家の中のトイレやお風呂などの場所がわからない

・ボタンを掛けられない、ネクタイをきちんと結べない

・トイレや入浴に介助が必要(体をうまく洗えない・拭くことを忘れる)

・尿や便がもれてしまう

・話が途切れがちになり、単語、短い文章でしか話せない

・歩く動作がおぼつかなくなる

 

経過は個人差も大きいのですが、発病後の最初の5年程度は軽症で経過して、7年前後で中等症、10年前後で重症となります。

 

補足:軽度認知障害(MCI)について

これは、認知症ではないものの、記憶など認知機能の低下が年相応以上に認められる状態のことです。

 

この段階で「認知症かもしれない」と物忘れ外来を受診される方が多いです。

 

この時点ですぐに認知症の診断とはなりませんが、数年の経過でアルツハイマー型認知症を発症することが多いと言われています。

 

 

診断

アルツハイマー型認知症を疑う症状に加え、画像の検査ができるのであれば検査を行って診断します。

 

頭のCTやMRIの検査では、海馬や頭頂葉の萎縮側脳室の拡大などが特徴的です。

 

MRI・CTスキャンのイラスト(健康診断)

 

自費になってしまいますが、アミロイドPET検査という検査で直接アミロイドβの蓄積を見ることもできます。

 

これは早期の認知症の診断に役立ちます。

 

髄液検査も同様に髄液内のアミロイドβの量を調べるのに使われ、これも早期診断のために行う医療機関もあるようです。

 

 

主な治療

薬物療法と非薬物療法を組み合わせて治療を行っていきます。

 

非薬物療法は本人への負担も少なく行うことができる治療です。

 

生活環境を整える、嫌がることを強制せずその人のペースで生活できるよう手助けをする、などの工夫で、本人や介護者が生活しやすくなる仕組みづくりを目指します。

 

リハビリテーション心理療法音楽療法レクリエーションペットセラピーなども効果的と言われています。

 

リハビリをしている老人のイラスト

 

薬物療法については、使用するメリット、デメリットを考えながら検討していきます。

 

(ただでさえ薬の数が多いところに認知症の薬も増えると飲み忘れや飲み過ぎを招いたり、薬の副作用で体調悪化、など体のバランスを崩す原因になることもあります。)

 

薬物治療は大きく3つにわかれます。

 

薬のイラスト「薬の紙袋」

 

 

抗中核症状薬

1つ目は物忘れといった中核症状に効く薬です。

 

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞から出る「アセチルコリン」という物質が減ってしまいます。

 

そのアセチルコリンを増やす効果のある「コリンエステラーゼ阻害薬」と言う薬を使います。

 

飲み薬ではドネペジル塩酸塩(アリセプト)ガランタミン臭化水素酸塩(ガランタミン、レミニール)、貼り薬ではリバスチグミン(リバスタッチパッチ)ドネペジル(アリアドネパッチ)などの選択肢があります。

 

その他に、「NMDA受容体拮抗薬」という、別の経路から脳の神経細胞を守る薬を使うこともあります。

 

これは飲み薬のみ、メマンチン酸(メマリー)があります。

 

薬ごとに特徴や使い分けがあるので認知症の診察に慣れた医師によって薬の選択が行われます。

 

抗周辺症状薬

2つ目は周辺症状(BPSD)に対する薬です。

 

これは症状に合わせて薬を使い分けます。

 

先ほどのコリンエステラーぜ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬を使うこともあります。

 

興奮が強く怒りっぽい場合は、気持ちを落ち着かせる効果のある漢方や、抗精神病薬を使ったりします。

 

一方、抑うつ気味の場合はうつに対する薬や抗不安薬を使うこともあります。

 

昼夜逆転がある場合は睡眠薬で生活リズムを整えることもあります。

 

新薬

最後3つ目は新しい薬です。

 

2023年12月に新薬「レカネマブ(レケンビ)」という点滴薬が発売されました。

 

この薬はアミロイドβを取り除く作用があり、病気の進行を遅らせ、認知症の進行を緩やかにすることが期待されています。

 

あまり進んでいない軽度の認知症の方のみ使用できます。

 

また、治療開始までの基準も厳しいので限られた医療機関でしか治療導入することができません(当院では投薬できません。)

 

使用することで認知症の進行を遅らせることはできますが、完全に進行を止めることができないことも注意が必要です。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

今回はアルツハイマー型認知症について、ざっくりとお話してきました。

 

アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も頻度が高く、緩徐に進行する病気で、環境・薬剤調整により進行を遅らせることはできるものの、今日の医療では進行を食い止める・治すことはできない病気、ということです。

 

ただ、介護している方にとっては非常に厄介な病気です。

 

介護疲れのイラスト

 

うまく付き合っていくにはどうしたらいいか、我々もあれやこれや考えながら日々診療に当たっています。

 

来月は別の三大認知症についてお話ししていきます。

 

 

それでは、また。

 

 

 

 

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