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健診で尿潜血が見つかったら

[2023.12.26]

前々回の尿蛋白に引き続いて、健康診断で尿潜血が見つかったら、というお話をします。

 

尿潜血は、尿蛋白と同じく健診時の検尿異常で偶然発見され、慢性腎炎などの腎疾患発見のきっかけになることが多いです。

 

健診で尿潜血が陽性になる確率は数%から20%と言われていますが、歳を重ねるごとに陽性確率が上がっていきます。

 

また男性よりも女性の方が陽性となりやすいことが知られています。

 

尿検査のイラスト(健康診断)

 

 

尿潜血とは何か?血尿との違いは?

尿潜血は、尿蛋白と同様に尿試験紙を用いる「尿定性検査」により、色が濃いと陽性の判定になります。

 

一方で血尿とは、赤血球が尿中に出ている状態のことです。

 

健診で尿潜血の検査を行う一番の目的は「血尿が出る病気を見つけること」で、尿潜血陽性となった場合は、血尿が出ているかどうかを調べるために今度は「尿沈渣検査」を行います。

 

ただし、尿潜血が陽性になったから必ず血尿があるわけではなく、「偽陽性」と言って、筋肉が壊れた時に出る物質や溶血、細菌や白血球、精液に含まれる物質でも陽性になることがあります。

 

逆に、ビタミンCをサプリなどで多量に取っている場合や、カプトプリルという降圧薬を飲んでいる場合には、「偽陰性」(血尿が出ているのに陰性と結果が出てしまうこと)となることがあるので注意が必要です。

 

尿沈渣検査は、尿を遠心分離機にかけ、集められた沈殿物を顕微鏡で調べる検査方法です(尿の成分には、赤血球だけでなく白血球、結晶、上皮細胞、細菌などがあり、これらを調べることでさまざまな病気発見の手掛かりとなります。)

赤血球のイラスト(人体)

 

 

 

この検査を行うことで「尿中に赤血球が出ているかどうか=血尿かどうか」がわかります。

 

このように、尿沈渣検査で「血尿」と判断された場合には、何かしらの病気が隠れている可能性があるので、さらに追加で検査を行っていきます。

 

 

血尿に伴う症状

血尿の量が多い場合は「肉眼的(にくがんてき)血尿」と言って、尿の色が赤褐色やコーラ色になるなどで目で見て異常だとわかることがあります。

 

しかし、目で見てもわからないけれど尿検査することでわかる場合(「顕微鏡的(けんびきょうてき)血尿」といいます)もあり、血尿に特徴的な症状はありません。

 

ただ、血尿が出る原因によっては症状が出ることもあります。

 

例えば尿路結石で尿の通り道が傷ついて出血している場合は背部痛や腹痛などの痛みが出ることがあるほか、多発性嚢胞腎における嚢胞出血では嚢胞破裂の際に腹痛が出ることもあります。

 

 

血尿の出る病気

では血尿が出ている場合、どういった病気が考えられるのでしょうか。

 

血尿の原因は、① 腎尿路系② 全身性要因に分けられます。

 

① 腎尿路系

<腎臓が原因の場合>

 内臓のアイコン(腎臓)

・各種糸球体腎炎(IgA腎症・急性進行性糸球体腎炎など)

・尿細管障害、間質性腎炎

・腎組織の損傷からの出血(外傷、腎嚢胞、腎腫瘍)

・先天性のもの(腎形成異常、菲薄基底膜症候群など)

 

<尿道や膀胱・前立腺が原因の場合>

・尿路感染症、外傷、尿路結石、悪性腫瘍、前立腺肥大など

 

② その他の全身性要因

・血管病変(大動脈瘤、腎動脈狭窄、腎梗塞、アテローム塞栓症など)

・膠原病由来(ANCA関連血管炎、SLEなど)

・薬剤性(抗凝固薬、抗血小板薬など)

・その他(ナットクラッカー症候群、激しい運動など)

 

などです。

 

ずらっと挙げてみましたが、血尿には様々な原因があります。

 

 

血尿と診断された後の精密検査

さて、尿沈渣検査で血尿(+)と診断された場合は、

 

・尿蛋白も一緒に出ているか?

 

・赤血球の形が変形(=変形赤血球)していたり円柱が出ていないか?(出ている場合は糸球体腎炎など、腎臓疾患由来の血尿の可能性があります)

 

・細菌尿ではないか?

 

・尿中白血球が出ているか?(膀胱炎などの尿路感染症由来の血尿の可能性があり、その場合は抗菌薬で治療後に再度尿検査をすることがあります)

 

・どの程度どのくらいの期間、血尿が出ているか?

 

・一時的か?持続性か?(一時的な場合は「ナットクラッカー症候群」と言って体内での血管の位置関係による血尿の可能性もあります)

 

などを問診や繰り返しの尿検査で確認します。

 

また、血液検査をはじめ、腹部超音波検査CT検査、がんに由来する血尿を疑う場合は胃カメラ大腸カメラなどの画像検査も行っていきます。

乳腺エコーのイラスト 内視鏡検査のイラスト(健康診断)

 

尿路系のがんが疑わしい場合は尿細胞診と言って、膀胱や尿管などから剥がれて尿に出てくる細胞を顕微鏡で調べてがん細胞がないかをチェックする検査を行います。

 

特に40歳以上男性喫煙している、泌尿器科系の病気や尿路感染症にかかったことがある肉眼的血尿が出ている、などといった場合は尿路系のがんにかかっている可能性が高くなります。

煙草を吸っている人のイラスト

 

そのため積極的に検査を行って、疑わしい場合は泌尿器科で精密検査を行います。

 

 

精密検査で異常がなかった場合

以上のような検査を行って特に問題がなかった場合も、初期の腎炎などの可能性があるので年に1回程度は尿検査で経過観察を行うようにしましょう。

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

外来をしていると「健康診断でずっと尿検査が引っかかっていたけれど病院にかかっていなかった」という方にもちらほらお会いします。

 

尿潜血など尿検査が健康診断の項目に入っているということは、それだけ重要な検査だということです。

 

病気の早期発見につながる可能性がありますので、健診で引っかかった方はぜひ早めの受診をお勧めします。

 

それでは、また。

 

 

 

 

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