夏でもインフルエンザ、流行っています
こんにちは。
暦の上ではもう秋ですが、まだまだ暑い日々が続きますね。
外来診療をしていると、発熱・風邪症状の患者さんが増えてきていると感じます。
夏風邪も多いのですが、コロナや溶連菌感染症、プール熱・・といった他の感染症も多く、そして今年は思った以上にインフルエンザの患者さんも潜んでいます。
そして、9月に入りこれからますますインフルエンザの流行が予想されます。
今回はインフルエンザについて、国立感染症研究所の情報や日本感染症学会のガイドライン・提言を元にご紹介します。
インフルエンザとは
インフルエンザは、ご存知のようにインフルエンザウイルスによる気道感染症のことです。
日本では毎年11月下旬〜12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃がピーク、4~5月にかけて減少していくことが多いですが、流行の程度はその年によって異なります。
(千葉県ホームページより)
インフルエンザが流行する年は、インフルエンザによる死亡、肺炎による死亡(細菌性肺炎の合併・インフルエンザ肺炎・治癒後の細菌性肺炎発症など)、感染による基礎疾患の悪化での死亡が増えるので、例年に比べて死亡者が増えることが知られています。
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。
A型とB型ウイルスの表面にはヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白があって、ウイルスが生き物に感染するために大切な役目を果たします。
ひとつのウイルスにはHAとNAが一種類ずつついています。
A型インフルエンザウイルスのHAには16種類(H1~H16)、NAには9種類(N1~N9)もあり、この組み合わせによってA型にはH1N1~H16N9の144種類の"亜型"が存在します。
人間の体には免疫機能があり、一回感染したウイルスに対しては攻撃力を獲得するのですが、感染したウイルスと異なるNA/HAをもつものに対してはその免疫が効かず感染・発症してしまうので、一年に何回もインフルエンザにかかることもあります。
同じ亜型の中でもわずかな変化が常に見られ毎年のように変異ウイルスが出現しますが、中でも大変異と呼ばれる大きな突然変異を起こしたものは「新型インフルエンザウイルス」と呼ばれます。
車に例えると、前者は車の塗装を変えるイメージ、後者は車を買い替えるイメージでしょうか。
突然別の亜型のウイルスが出現して、今まで幅を利かせていた亜型ウイルスにとって代わることでインフルエンザは大流行します。
1918年にスペインかぜ(H1N1)が出現し、世界全体で2000万人〜4500万人、日本では38万人〜45万人の死者を出し、その後39年間続きました。
次いでアジアかぜ(H2N2)や香港型(H3N2)が、1977年からソ連型(H1N1)が加わり、現在はA型であるH3N2とH1N1、およびB型の3種のインフルエンザウイルスが世界中で流行しています(B型インフルエンザウイルスにもHAとNAの糖蛋白がありますが、それぞれ1種類しかないので変異もしづらく、安定して感染者を作りますが一方であまり大きな流行は起こしません。)
主な感染経路は、せきくしゃみなどの飛沫による感染(飛沫感染)です。
他に、飛沫の付着物に触れた手や指を介した接触感染もあります。(新型コロナウイルス感染症と同じですね)
症状
感染してから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身のだるさ、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などのかぜ症状がこれに続き、約1週間の経過でよくなってくるのが典型的な症状です。
いわゆる「かぜ」に比べて全身の症状が強く、高齢の方や、基礎疾患のある方、免疫機能が低下している方では重症化しやすいことが知られています。
また、小児では急性脳症や中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息を誘発することもあります。
高齢の方では、非典型的な症状が出ることも多く、食欲が落ちた、全身がだるい、力が出ない(脱力)などの全身症状が前面に出て、一見するとインフルエンザと判断ができないことがあります。
診断
迅速抗原検査は簡単で優れた検査で、広く使われています(これをお読みの方も一度や二度は皆さんされたことがあるのではないでしょうか・・鼻に検体採取用の綿棒を入れてグリグリする検査です。)
昨今はCOVID19とインフルエンザの判別が難しい方が多く、それぞれの疾患の流行状況や接触歴を元に、どちらの検査も行うこともあります(当院ではCOVID19とインフルエンザを同時にチェックできる抗原キットも用意しています。)
注意することとして、ある程度ウイルスが増えた状態で検査をしないと正しい結果が得られない点があります。
いったん体の中に入ったインフルエンザウイルスは猛烈な勢いで増え続けて、症状が出てから2~3日後(48~72時間後)に最も数が多くなります。
ウイルスの量が最大になる前、つまり症状が出てから48時間以内に抗インフルエンザ薬を使って増殖を抑えれば、病気の期間を短くし、症状の悪化を防ぐことができる可能性があります。
そのため、インフルエンザの検査を受けるタイミングは、発熱などの初期症状が現れてから12時間以降、48時間以内を推奨します。
治療
治療について、最初に皆様にお伝えしたいのは、インフルエンザは自分の免疫で治る感染症だということです。
多くの人はいわゆる「かぜ」と同じように薬を飲まずとも自然に回復します。
しかし、高齢の方や幼児、基礎疾患を持っている人では重症化のリスクが高いこと、健康な若い方でも重症化することもあるので、抗インフルエンザ薬による治療が勧められています。
先ほどお話ししたように、発症して早期に抗インフルエンザ薬を使うことで、病気の期間を短くし、症状の悪化を防ぐことができる可能性があります。
逆に言うと48時間を過ぎてしまうと、「抗インフルエンザ薬を使った方がいい」と言う明確な根拠が少ないので薬を使用せずに対症療法で様子を見ることも多いです。
今日本で使用できる抗インフルエンザ薬は、オセルタミビル(タミフル®︎)、ザナミビル(リレンザ®︎)、ラニナミビル(イナビル®︎)、ペラミビル(ラピアクタ®︎)と言う4種類の同じ薬効の薬と、2018年に新しくバロキサビル マルボキシル(Xofluza ゾフルーザ®)という異なる機序の薬、合わせて5種類あります。
治療の場所(外来か入院か)、肺炎を合併しているかどうか、重症度などを考えて、薬の選択を行います。
また、インフルエンザの重症リスクの高い人には予防内服を行うこともあります(ただし保険適応外となります。)
抗インフルエンザ薬以外にも通常のかぜと同様に解熱剤や咳止め・痰切り等を処方することも多いです。
いかがでしたでしょうか。
インフルエンザもコロナウイルス感染症も日頃の対策が重要です。
感染しない!感染させない!を目標に、これからの時期、今まで以上に手洗いうがい、咳エチケット、(特に重症リスクの高い人がいる場所などでの)マスクの着用など、感染予防を心掛けていきましょう。
それでは、また。
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