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寒い季節に要注意!その2〜大動脈解離〜

[2024.01.13]

新年初投稿になります。

 

今年もよろしくお願いします。

 

今回は、「寒い季節に要注意!」シリーズ第2弾、大動脈解離についてです。

 

大動脈解離は急性心筋梗塞と並び、冬になると増える、突然発症の、命に関わる緊急疾患の一つで、大動脈という血管が突然裂けてしまう病気です。

 

急性心筋梗塞と同じく、発症と同時に突然、胸痛背部痛が生じます。

胸が痛い人のイラスト(男性)

 

大動脈という血管が裂けたことに由来する痛みです。

 

結構な痛みのため救急車を呼ぶことがほとんどですが、1時間に1-2%ずつ死亡率が上がっていくと言われており、早期の診断、治療開始が必要です。

 

大動脈のどの部分が裂けているかなどにもよりますが、病院に着くまでに心停止に至る場合があるほか、手術をしないと半数近くが亡くなるといったデータもあります。

 

血管が裂けるとは言ってもどういうことなのか、その治療や、どうしたら防げるのかなど詳しく見ていきます。

 

大動脈の構造

大動脈は心臓を出て直後の上行大動脈から弓部大動脈を経て、下行大動脈となり、横隔膜を越えて腹部大動脈となり、二股に分かれて腸骨動脈となります。

 

弓部大動脈からは頭や腕に行く血管が分岐し、下行大動脈からは脊髄に行く細い血管たちが分岐し、腹部大動脈からは胃腸や腎臓へ行く血管が分岐し、腸骨動脈以降は骨盤の中や足へ行く血管となります。

 

ところで、大動脈は外膜、中膜、内膜など複数の層から成っています。

 

 

大動脈解離では、動脈硬化などで一部血管の内膜(一番内側の膜)が弱くなっている部分に亀裂が生じ、本来の血液の通り道(内膜の内側)を逸れて中膜や外膜のすぐ内側にも血液が通るようになります。

 

本来の通り道でない、新しくできた血液の通り道を「偽腔(ぎくう)」と呼び、本来の血液の通り道を「真腔(しんくう)」と呼びます。

    

 

真腔が偽腔に圧排されて狭くなってしまうこともしばしばです。

 

複数の層から成っているためすぐに大動脈が破裂しないようになっていますが、本来の血液の通り道(真腔)を通る血液が少なくなることで腸や腎臓といった臓器に十分な血液が行き渡らなくなり虚血という状態になることがあります。

 

上行大動脈は、心臓を栄養する冠動脈を分岐しており、この場所に大動脈解離が起こると心臓に血液が行かなくなったり、上行大動脈の心臓の入り口の部分まで裂けてしまうと心タンポナーデといって心臓の周りに血液が溜まり心臓の動きが制限されてしまうといったことが起こります。

その場合は特に早急に対応しないと、心停止に至ったり、頭へ血液が行き渡らなくなり脳虚血、脳死状態となったりします。

 

大動脈解離の分類

一番有名な分類として、Stanford(スタンフォード)分類というものがあります。

 

上行大動脈に大動脈解離があるものをStanford A型、上行大動脈には大動脈解離がないものをB型といいます。

 

A型は先に述べたとおりすぐさま命の危機に晒されるため、緊急手術が必要になることがほとんどです。

 

手術をしない場合には死亡する可能性が極めて高いです。

 

一方B型はすぐさま命の危機に晒されることはありませんが、裂けた部分がどんどん広がっていくのを防ぐため、血圧を低く保ったり、しばらく安静が必要になったりします。

 

いずれにしても家に帰してもらえることはまずなく、しばらく入院が必要になります。

 

治療方針を決めるのにA型なのかB型なのか判断することが必要で、そのためには造影CTといって、血管内に造影剤を入れた状態で撮影するCTの検査を行います。

 

どこから血管が裂け始めたのか、どこからどこまで裂けているのかなどが詳しくわかります。

 

心タンポナーデの有無や心臓の動きに問題がないかなどは心臓超音波検査で調べます。

 

大動脈解離になりやすい人

どのような人が大動脈解離になりやすいかというと、動脈硬化が進んでいる人で、高血圧がある人(特に未治療の人やコントロール不良つまり血圧が高いままの人)がなりやすいです。

 

動脈硬化はそもそも高血圧をはじめ、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病や、喫煙など生活習慣によるところが大きいです。

ベランダで喫煙する人のイラスト

 

健康診断を受けていなかったり、受けていても生活習慣病関連の異常を指摘されたまま未受診の人は危ないです。

 

また、高齢になってから発症することはなくはないもののあまり多くはありません。

 

働き盛りの50代、60代の方で上記に該当する場合は特に気をつけましょう。

 

大動脈解離を発症しにくくするためには、気をつけるというより、健康診断を受診し異常を是正する必要があります。

 

発症するまではこれっぽちも症状はありませんので、自分は大丈夫だろうという謎の思い込みを捨て、生活習慣をよく見直してみてください。

 

手術で救命できた方で、こんなことになるんだったらと後悔の弁を述べられる方をこれまで何度となく診てきました。

 

大動脈解離の治療法

ある程度先に述べた通りですが、Stanford A型の場合は基本的に緊急手術です。

 

大動脈解離は特に血圧が高いと広がっていくことがあるので、早急に裂け目の入り口部分を含む大動脈を人工血管に取り替える手術をします。

 

 

たまに勘違いされますが、裂けた部分をぜんぶ取り替えるわけではありません。

 

かなりの長さにわたり大動脈が避けることも少なくなく、すべてを取り替えるのは現実的ではありません。

 

裂け目の部分を人工血管に取り替えることで、偽腔にこれ以上血液が流入し偽腔が大きくなっていくのを防ぐのがこの手術の一番の目的です。

 

A型でも、偽腔がすでに血栓といって血の塊で塞がっている(血流がない)場合には緊急手術はせずに、偽腔が大きくなってこないか密にCT検査をしつつ経過観察とする場合もあります。

 

もし大きくなってきてしまうようだとやはり速やかに手術が必要になります。

 

Stanford B型の場合は、手術をせず安静と降圧(血圧を下げる薬で血圧をある程度低く保つ)による保存加療となる場合と、裂け目の部分にステントグラフトといって金属の入った筒を入れる手術(人工血管と取り替える手術よりずっと小規模)をする場合とがあります。

 

 

後者はステントによって内側から裂け目を潰して、偽腔にこれ以上血液が流入し偽腔が大きくなっていくのを防ぐというものです。

 

B型の場合は死亡率はあまり高いものではありませんが、A型B型ともにどうにか救命できたとしても、「治った」わけではありません。

 

裂けたまま残った大動脈がそのうち元通りになることはありませんので、残った偽腔部分が少しずつ血流を受けて大きくなりコブとなった大動脈瘤となってしまえばまたその部分を人工血管と交換したり、ステントを入れたりする必要が出てきます。

 

まずはそうなっていないか定期的に造影CT検査が必要ですし、検査を受けていないと、気づかず大きくなった大動脈瘤が突然破裂し命を落とす場合もあります。

 

また、人工血管やステントは人工物ですので、細菌感染のリスクがつきまといます。

 

歯科治療などでどこかから身体に入った細菌が人工血管やステントにすみついてしまえば、たちまち全身に細菌が回り敗血症となり得ます。

 

長期間の抗生剤治療や人工血管を新しい人工血管に交換する手術が必要になったりしますが、全身に散らばった細菌を完全に殺し切ることは簡単ではなく、中長期的に結局細菌感染で命を落とすということもあります。

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

大動脈解離の方をこれまで数多く診てきましたが、緊急手術で助かってその後元気にされている方もいる一方で、救命できてもその後動脈瘤などで何度も手術が必要になったり、人工血管感染で命を落とされた方もいました。

 

考えようによっては癌よりタチの悪い病気です。

 

生活習慣を是正することによりある程度罹患リスクを軽減できるので、癌よりも防ぎようがあるのではないでしょうか。

 

生活習慣を是正することは大動脈解離のみならず心筋梗塞やほかの脳血管疾患の予防にも繋がります。

 

皆さまも、今日から、ぜひ。

 

では、また。

 

 

 

 

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