意外と知らない貧血のはなし
みなさん、こんにちは。
貧血、よく聞く言葉ですが、具体的に何が少なくなっているか、ご存知でしょうか。
突然くらっとくるのは実は貧血とはいいません。
貧血を正しく説明できる方は意外と多くありません。
今日はそんな「貧血」について解説します。
貧血とは
体内の血が少なくなるというイメージがありますが、そうではありません。
正しくは、血液中の赤血球や、その中に含まれる「ヘモグロビン」という物質が減少した状態のことを言います。
ヘモグロビンという言葉、聞いたことはあるでしょうか。
よく健康診断の項目で「Hb」として書かれている値のことです。
男性でおよそ14-18g/dL、女性でおよそ12-16g/dLが正常と言われています(多少誤差があります。)
ヘモグロビンは赤い色をしています。
そのため血色素と言われたりもします。
貧血になった時、顔色が悪くなったりするのは、血の赤い色を司るこのヘモグロビンが少なくなるからです。
ヘモグロビンが十分にある時は肺の血管の中で酸素とヘモグロビンが結合し、酸素が体のすみずみに行き渡るのですが、ヘモグロビンが少ない場合は、酸素が十分に運搬されません。
そのため、貧血になると身体が酸素不足になります。
酸素不足になると体内で色々な症状が出てきます。
貧血の症状
脳や筋肉、爪、皮膚など、体内のあちこちで酸欠による症状がでてきますが、自覚症状を伴うものは以下のようになります。
- めまい、頭痛
- 息切れ
- 疲れやすさ、全身のだるさ
- 動悸
- 顔色が悪い(青白い)、眼瞼結膜が真っ白になる
- 足が攣りやすい
- 爪がもろくなる
貧血の一つである鉄欠乏性貧血の人は、爪が薄く曲がる「スプーン爪」にもなりやすい他、味覚がおかしくなったり、氷を好んで食べるようになったり(氷食症)します。
他にも食べ物が飲み込みにくくなったり、舌炎・口角炎になることもあります。
貧血が進むスピードが早かったり、重症になればなるほど症状は強く出てきます。
ゆっくり貧血が進んでいるような場合は、重症であっても症状が全くない場合もあります。
ヘモグロビンの値には個人差があるため、普段の量と比較して急に2g/dL以上などの減少が見られた場合は、正常の値であっても貧血状態が疑われることもあります。
7-8g/dLを下回るような場合は、早急な検査や対応が必要になります。
貧血の原因
大きく3つに分けられます。
1. 赤血球を作ることができない
赤血球を作るためには多くの栄養素が必要です。
鉄、ビタミンB12、葉酸、亜鉛や銅などの成分が主なものです。
また、適切なホルモンバランスも必要で、特にエリスロポエチンというホルモンが重要な役割を果たしています。
エリスロポエチンとは、赤血球の生産を刺激するホルモンで、腎臓で作られます。
これらの栄養素やホルモンがないと、赤血球の生産速度や生産量が低下したり、赤血球が変形して酸素を十分に運べなくなったりします。
再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、白血病、多発性骨髄腫などの血液の病気では、元気な赤血球を作ることができなくなります。
その他、慢性炎症や感染症、がんなどでも、鉄の利用障害(ヘモグロビンの合成がうまくできなくなる)が出現し、赤血球が作られなくなります。
2. 赤血球が壊されている
通常赤血球の寿命は約120 日です。
しかし、寿命に達していない赤血球が破壊(溶血)されると貧血が進行します。
これを溶血性貧血と言います。
過剰な出血や赤血球産生低下による貧血に比べると、比較的まれな貧血です。
原因の不明な「特発性」のものもありますが、全身性エリテマトーデスやリンパ腫などによって続発性に引き起こされることもあります。
3. 知らないうちにどこからか出血している
手術や怪我のために出血することもありますが、多くの場合は、出血はじわじわと繰り返し起こり、その結果気がつかないうちに貧血が進んでいます。
よくある原因としては胃や大腸の潰瘍やポリープ・がんからの出血、尿の通り道からの出血や生理によるものです。
慢性的な出血があると体の中の鉄分が減少し、その結果赤血球を作ることができず、貧血がさらに悪化するという負のループに至ります。
貧血の診断
貧血が疑われたらまず血液検査を行います。
最近は社会的に健康診断の施行が浸透しているので、症状を自覚する前に貧血が見つかることもあります。
ヘモグロビン値が基準よりも低ければ貧血と診断されます。
健康診断で貧血と診断された場合は症状がなくても医療機関を受診するようにしましょう。
「なぜ貧血になっているのか?」を調べることで重大な病気が隠れているかどうかを判別することができます。
原因を調べるためには、まず栄養素が不足していないか、溶血していないか、鉄の利用障害がないか、腎不全がないか、など追加で採血チェックを行います。
出血が疑われるような場合はどこから出血しているかを調べるため症状に合わせて胃カメラや大腸カメラなどを行うこともあります。
月経過多や不正出血がある女性は婦人科での超音波検査を検討します。
他の臓器のがんが疑われるような場合はCT検査などをはじめとした画像検査も検討していきます。
貧血の治療
貧血を引き起こしている原因によって治療法が異なります。
最も多く見られる鉄欠乏性貧血は、基本的には鉄の補充が治療です。
食事の偏りがあるような場合は意識的に食事を改善すると鉄欠乏性貧血の改善につながることがあります。
鉄分はヘム鉄と非ヘム鉄に分けられ、ヘム鉄は赤身肉や魚、非ヘム鉄はひじきや小松菜、大豆製品、牛乳、卵などから摂取できます。
良質なタンパク質とビタミンCは鉄の吸収を良くするので、普段の食事でタンパク質、ビタミンCを多く含む野菜や果物なども積極的に取るようにしましょう。
食事を改善してもよくならない場合、もしくは鉄欠乏が重度の場合は数ヶ月連続して鉄剤を内服します。
鉄剤には以下のような種類があります。
- フェロミア
- インクレミンシロップ
- フェロ・グラデュメット
- リオナ
- フェジン(注射剤)
- (フェルムカプセルは製造中止)
基本的には内服での補充を試みます。
内服の鉄剤ではほぼ100%、黒色便といって便の色が黒くなりますが、特に問題はありません。
また、吐き気や下痢などの胃腸障害を引き起こすことがあるので、体にどうしても合わない場合は点滴での補充も検討されます。
その他の以下のような各栄養素不足による貧血の場合にも、足りていない栄養素を補充します。
ビタミンB12は野菜にはほとんど含まれておらず、肉や魚介類に多く含まれています。
葉酸は緑黄色野菜やレバー、納豆、大豆、果物類に多く含まれています。
亜鉛はレバーや牡蠣などに多く含まれますが食事のみで補充は難しいと言われています。
同じ食材に偏らず、それぞれの食材をバランスよく摂っていきましょう。
これらの栄養素には補充するための内服薬があり内服治療を始める場合、数ヶ月は内服を続けます。
頻度は多くないですが、銅欠乏の場合、日本では内服薬がないため、ココア飲用で対応します。
亜鉛と銅はお互いの吸収を阻害することがあります。
亜鉛欠乏性貧血と診断して亜鉛補充をはじめた結果、体内の銅が足りなくなってしまった患者さんをしばしば見ることがあります。
亜鉛補充をやめても改善せず、毎日ティースプーン1杯のココアを溶かして飲んでもらい、治療したこともあります。
腎不全による貧血の場合は体内で作られ足りないエリスロポエチンを増やすため、赤血球造血因子刺激製剤(ESA製剤)や、HIF-PH阻害薬という内服や注射の治療を行います。
その他の血液の病気やがん、溶血性貧血などは血液内科など専門の科での治療が検討されます。
いかがでしたでしょうか。
貧血と一言で言っても色々な原因があります。
健康診断を受診して貧血と診断された際は「鉄分を取れば大丈夫」と考えず、かかりつけ医に相談してみてください。
ちなみに、「突然くらっとくる」のは貧血ではなく「起立性低血圧」や「迷走神経反射」、あまり言いませんが「脳貧血」です。
次回はこの秋のインフル・コロナワクチンについて解説します。
それでは、また。
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