メニュー

胃瘻って?

[2024.02.14]

みなさん、こんにちは。

 

今日は、訪問診療と関わりの深い胃瘻(胃ろう)についてです。

 

胃瘻をご存知でしょうか?

 

今は自分には関係ないと思っていても、実際モノを目にすることはなくても、いつかは必ず関わることになるワードです。

 

自分のために、家族のために、知っておいて損はありません。

 

胃瘻とは何か?どういった場合に行うのか?必要なもの、栄養剤について、注意すべきことなど順番に解説していきます。

胃ろうのイラスト

 

胃瘻とは何か?

胃瘻とは、体外(肋骨弓の下あたり)から胃の中に向かってあけた穴・通り道のことで、その穴・通り道から食べ物の代わりとなる栄養剤を投与することを胃瘻栄養といいます。

 

胃瘻栄養は中心静脈栄養と並んで代替栄養法の一つで、慢性的・長期的に食事を摂れなくなってきた際に行うことがあるものです。

 

「食べられなくなってきた」といっても、インフルエンザなどで数日間食欲がない、とかそういう話ではありません。

 

特に高齢者で、嚥下機能(飲み込みの機能)が落ちてきたり、食欲がなくなってきて、いわゆる老衰に近い形で自分の力で栄養を摂れなくなってきた際に導入することが多いです。

 

国の認識としては、何らかの原因で嚥下機能が一時的に悪くなったものの、リハビリなどにより回復つまり自分の力でまた口から食事を摂れるようになるまでの一時的な手段である、という位置付けになっています。

 

しかし実際は、高齢者で、加齢により体力や気力が不可逆的に落ちていく中で、半永久的な手段として行われることが大半です。

 

どういう時に行うのか?

「食欲が落ちてきた」から話が始まることが多いです。

 

可逆的もしくは治療可能な食欲不振の原因がなく、突然ではなく徐々に、加齢とともに食欲が落ちてきます。

食欲のないお年寄りのイラスト

 

すると体重が減り始め、痩せていきます。

 

栄養剤などを試してみるものの、食欲は回復しません。

 

さあどうするか?

 

このまま食事量が減るようだと、低栄養脱水により寿命を迎えることになります。

 

そこで登場するのが胃瘻です。

 

胃に穴をあけ、食欲に関わらず胃瘻から栄養剤を投与します。

 

※ あとで述べますが、必ずやらないといけないものではなく、患者さんや家族の希望により決めます。

 

胃瘻栄養を始めるにあたって

いざ胃瘻栄養を始めようと思っても、在宅ですぐ開始できるわけではありません。

 

胃カメラなどを使って、胃に穴をあける位置を慎重に決め、何本かの糸で体壁と胃壁とを結び合わせ、体外から簡単に胃の中にアクセスできるように太いチューブ(カテーテル)を入れます。

 

何回か針を刺すので、胃の中に出血が起こるリスクもあります。

 

大きな手術ではありませんので経験豊富な上手な医師なら在宅でできるかもしれませんが、基本的には病院で行う処置になります。

 

ですので病院への事前の相談や、入院・手術の予約を取る必要があります。

 

場合によっては1ヶ月以上待つこともあるでしょう。

 

そういった理由で、高齢になり食べられなくなってきた時に胃瘻栄養をするかどうかを考え始めるのではなく、おおよその希望をあらかじめ考えておかないと、胃瘻栄養の開始がどんどん遅れてしまうことになります。

 

胃瘻で使う栄養剤

一口に栄養剤というと、紙パックに入っているサラサラのものをイメージする方が多いのではないでしょうか。

 

しかし胃瘻で使う栄養剤としては、「半固形」の栄養剤を使うことが多いです。

本来、口に入れた食べ物は口内で細かく噛み砕かれ、喉で飲み込み、食道を通って胃に送られ、胃で消化が始まります。

 

対して胃瘻栄養は口と喉と食道を飛ばして、胃から栄養剤が入り始めます。

 

つまり「口内で細かく噛み砕かれ」た状態の栄養剤を胃から入れれば、あとは口から食べている人と同じように消化されていくわけです。

 

サラサラでない栄養剤のほうが下痢をしにくいというメリットもあります。

 

保険点数で算定するためには「ラコール」という半固形栄養剤を使うことが多いです。

 

これは医師が処方し、処方箋により薬局で受け取れるものになります。

 

胃瘻管理上の注意

胃瘻栄養をする場合、医師による定期的な診察が必要です。

 

元気で通院可能だけど口から食べれないので胃瘻、という患者さんは多くなく、通院が難しい患者さんが大半ですので、訪問診療と関わりが深いというわけです。

訪問看護・訪問介護のイラスト(女性)

自宅で胃瘻栄養を行うには、基本的には、栄養剤を処方してもらい、栄養バッグやチューブなどを受け取り、難しくはありませんが、胃瘻カテーテルとチューブを繋いだり、栄養剤を投与したりするのは原則、患者さん本人や家族が行います。

 

物品類は定期的に交換する必要があります。

 

カテーテルの交換は医師が行います。

 

施設の場合は、まず胃瘻患者さんの受け入れが可能かどうか確認が必要です。

 

受け入れ可能な施設が増えていますが、受け入れ不可の施設もあるほか、受け入れ可能な場合でも施設スタッフがどの程度対応してくれるのかも確認しておく必要があります。

 

入院していないとできない治療というわけでは決してありません。

 

胃瘻は延命?

胃瘻栄養をするかどうか、どうやって決めたらいいのでしょうか?

 

食道や胃の手術を受けたことがある患者さんの場合はそもそもできないこともありますが、基本的には患者さんや家族の考え方、価値観によるところが大きいです。

 

議論のあるところですが、胃瘻は延命治療の一つであるという捉え方もできます。

 

高齢になり、老衰と思われる状態によりご飯が食べられなくなってくると、低栄養脱水が進み、腎不全血圧低下により亡くなっていきます。

 

それが寿命だと考え、胃瘻栄養を含む代替栄養を希望しないという選択肢も当然あります。

 

昔はそれが通常でしたが、近年は医療の進歩により、口から自分で食べられなくなっても人為的に栄養や水分を投与することができるようになりました。

 

胃瘻栄養により寿命は延びるでしょう。

 

しかし、加齢により食べる気力がなくなってきたということは、それ以外にも、自分で歩けなくなってきたほぼ寝たきりとなったトイレに自分で行けなくなり排泄に介助が必要になった風呂に入れず清潔に介助が必要になった認知機能も落ちまともに会話が成立しない、などといった状況が進んできます。

体を拭く介護士のイラスト

 

無理して寝たまま水分を摂ると誤嚥し、肺炎になることもあります

 肺炎のイラスト

 

元気だったころとは打って変わった状態になるでしょう。

 

胃瘻栄養により寿命を延ばすことは、そういった状態を受け入れるということに他なりません。

 

もちろん、それを否定するわけではありませんが、その状態を本人や家族が受け入れられるでしょうか?

 

本人が元気だったころ、望むことだったでしょうか?

 

こんなはずじゃなかったということにならないように、あらかじめ未来を想像し、家族で話し合い、いざとなったときに胃瘻栄養を行うかどうか、おおまなか方針や希望を今のうちから決めておくといいでしょう。

 

胃瘻栄養をするしないどちらが正解というのはありません。

 

少しでも考えておいてもらえると、そうなったときに医師としてもとても助かります。

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

胃瘻は、厳密には治療法ではありませんので、やるかどうかは医者が決めるというより、患者さん本人やそのご家族の希望や考え方、価値観によるところが大きいです。

 

メリットデメリットをよく理解した上で、いざ食べられなくなってきた際にスムーズに決断できるといいですね。

 

もう一つの代替栄養法である中心静脈栄養についても今後解説予定です。

 

それでは、また。

 

 

 

  • オーダーメイド在宅医療
  • 多職種連携
  • 専門医の充実
診療時間
9:00〜13:00
13:00〜17:00--

  ○:訪問診療・往診可、△:往診相談可
   24時間365日電話対応可(諸条件あり)
   -,土日祝は原則往診不可

 

  271-0077
  千葉県松戸市根本9-17 SKYGRIP 201
  TEL 047-707-3456
  FAX 047-413-0537

  • 電車でお越しの方JR常磐線・千代田線 松戸駅西口 徒歩5分
  • お車でお越しの方駐車場はありません
    近隣のコインパーキングをご利用ください すぐ向かいにNPC 24H、三井のリパークがあります
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME