過活動膀胱〜頻尿を改善する〜
みなさん、こんにちは。
内科の診療を行っていると患者様から「最近トイレの回数が多くって・・」という相談を受けることがあります。
「トイレの回数が多い=頻尿」ということですね。
頻尿にはいろいろな原因がありますが、今日はその中でも頻度の高い「過活動膀胱」についてまとめてみましたので、ご覧いただけますと幸いです。
過活動膀胱とは?
過活動膀胱とは、膀胱が過敏になって、尿が十分にたまっていなくても、本人の意思とは関係なく膀胱が収縮する状態のことを言います。
その結果、急に尿意をもよおしたり(尿意切迫感)、何度もトイレに行きたくなったり(頻尿)ということが起きやすくなります。
過活動膀胱の症状
過活動膀胱には大きく4つの症状があります。
1.尿意切迫感
急にトイレに行きたくなり、尿が漏れそうになります。
尿意は我慢することが難しく、過活動膀胱の患者さんでは必ず起こる症状です。
2.昼間頻尿
昼間の排尿回数が多くなります。(8回以上)
3.夜間頻尿
夜中に排尿のために少なくとも1回以上トイレに起きてしまいます。
ただし過活動膀胱とは無関係に起こることもあります。
夜間頻尿だけの場合、飲水量を控える、夕食以降にカフェインや水分を多く含む食物を摂取しないといった行動療法を行うことで1.5回ほど排尿回数が減少します。
4.切迫性尿失禁
トイレまで間に合わず、尿を漏らしてしまいます。
過活動膀胱症状スコア(OABSS)という簡単な質問票(久光製薬より)で過活動膀胱かどうか、その程度を調べることができます。
気になる方は一度チェックしてみてください。
過活動膀胱の原因
過活動膀胱の原因は大きく2つに分けられます。
脳と膀胱を結ぶ神経にトラブルがある(神経因性過活動膀胱)場合と、明らかな神経トラブルがない(非神経因性過活動膀胱)場合です。
1.神経因性過活動膀胱
脳は、膀胱や尿道と情報のやりとりを行い、膀胱にたまった尿の量などの情報をもらって周りの筋肉の動きをコントロールしています。
この信号が上手く伝わらないせいで、尿が十分な量たまっていないのに急に尿意が起こり、尿漏れを起こします。
脳梗塞、脳出血などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発硬化症などの脊髄の障害などの後遺症として現れます。
2.非神経因性過活動膀胱
男性では前立腺肥大症、女性では加齢や出産による骨盤底筋群のダメージ、そして加齢による筋力の低下が原因であることが多いです。
中には原因がわからないものもあります。
過活動膀胱の検査
1. 問診
まずは問診として、過活動膀胱らしい症状かどうか、排尿時の痛みや尿の線が細いなどの症状はないか、排尿後の残尿感や痛みなどがないか、以前かかったご病気・飲んでいる薬などを確認します。
また、普段の飲水状況を確認し、飲み過ぎのせいで頻尿になっていないか?を確認します。
過活動膀胱症状スコアに沿って症状を確認することもあります。
次に身体診察と尿検査を行います。
2. 身体診察
身体診察では、一般的な聴診や触診のほか、尿が溜まり過ぎて下腹部がふくらんでいないか、男性の方だと前立腺の直腸診や、女性の方だと骨盤内臓器が外に飛び出していないか、などを確認します。
3. 尿検査・超音波検査
尿検査では血尿が出ていないか、尿に細菌が溜まっていないか、「尿細胞診」といって尿中にがん細胞が出ていないか、などをチェックします。
そして可能であれば腹部超音波検査を行って、排尿後に膀胱内に尿がたまっているかどうか(残尿測定と言います)、尿の通り道に問題がないか、を確認します。
ご高齢の方では膀胱から尿を出す力が弱っていることもあるので、治療前、治療中にも必要に応じて残尿測定を行うこともあります。
4. その他
ほかに、ご高齢の方は認知症やフレイル(体重減少、活動性低下、筋力低下、歩行速度低下、日常的な倦怠感など)を患っていることも多いので、場合によっては認知機能の検査や、日常生活のADL確認を行います。
また、過活動膀胱以外の病気や尿トラブルの原因が隠れていないか、下記のような病気・トラブルがないかもあわせて確認していきます。
・癌:膀胱がんや前立腺がん、骨盤内腫瘍などは尿意に影響をもたらすことがあります。
・尿路結石や膀胱炎など:頻尿の原因になることがあります。
・子宮内膜症などの膀胱近くの異常
・多尿:尿崩症という病気やメンタルの問題で飲水量が増えると、排尿量が増え、その結果頻尿になることがあります。
・薬の副作用:利尿薬を飲んでいる場合やSGLT-2阻害薬という糖尿病/心不全/腎不全の薬を飲むと多尿になることがあります。
過活動膀胱の治療
続いて、過活動膀胱と診断された際の治療についてご説明します。
1. 行動療法(非薬物治療)
薬を使わず、日常生活の中で自主的に行う治療法です。
デメリットなどもほぼないので、すべての患者さんに対して行ったほうがいい最初の治療になります。
ここでは現在のガイドラインで強く推奨されているものを3つご紹介します。
減量
メタボリック症候群の人たちは過活動膀胱になりやすく、減量により過活動膀胱症状の症状が改善した、との結果が研究で示されています。BMIが基準値よりも高い方は減量を行うことをお勧めします。
膀胱訓練
尿を我慢する、つまり膀胱に負荷をかけることで膀胱の容量を増やし蓄尿症状を改善させます。
骨盤底筋訓練
骨盤底筋の筋力をつけることで尿道を収縮させ、尿漏れを防ぎ、特に女性の尿失禁に対して有効です。骨盤底筋訓練は副作用がなく、薬物療法など様々な治療との組み合わせで行われます。
他にも禁煙や食事指導(アルコール・カフェイン・炭酸飲料の摂取を控える、低脂肪食を摂取するなど)、便秘の改善、などの行動療法も過活動膀胱に効果的かもしれない、と言われていますが、上3つほどの強い推奨度ではありません。
行動療法は劇的に症状を改善するものではなく、コツコツと時間をかけて行い、少しずつ効果を実感できる治療法になります。
なので、行動療法とあわせて、薬物療法も検討します。
2. 薬物療法
女性か男性か、男性の場合50歳未満か50歳以上か、に分けて異なる治療法が提唱されています。
女性
β3受容体作動薬もしくは抗コリン薬での治療を行います。
男性(50歳未満)
前立腺肥大症の影響はないと思われるので、神経疾患(神経変性疾患,脊柱管狭窄症など)や前立腺炎などの病気がないかを調べつつ、β3受容体作動薬もしくは抗コリン薬での治療を行います。
男性(50歳以上)
前立腺肥大症による過活動膀胱の可能性が高いので、前立腺肥大症の治療薬である、α1遮断薬やPDE5阻害薬での治療を行います。
治療効果が弱いようなら抗コリン薬やβ3受容体作動薬などを併用することもあります。
これらがメインに使う薬になります。
それぞれの薬について少し解説します。
・β3受容体作動薬・抗コリン薬
この2つはいずれも膀胱を広げて尿の通り道を絞めることで、尿を蓄えやすくする効果があります。
β3受容体作動薬はベタニス®︎、ベオーバ®︎の2種類があります。
抗コリン薬はベシケア®︎、バップフォー®︎、ウリトス®︎、トビエース®︎、ネオキシテープ®︎などです。
抗コリン薬の方が口渇を感じやすく、便秘にもなりやすいと言われているほか、尿閉を起こしやすいので、最近ではご高齢の方にはβ3受容体作動薬を最初に使う、抗コリン薬を通常よりも少ない量から始める、というケースが増えています。
・α1遮断薬・PDE5阻害薬
α1遮断薬には前立腺を小さくする、尿の通り道を広げる効果があります。
ハルナール®︎、ユリーフ®︎、フリバス®︎などがあります。
PDE5阻害薬には尿の通り道の血管を広げたり、前立腺などの平滑筋を弛めることで尿を通りやすくする効果があります。
ザルティア®︎という1種類が使用できます。
この2つは前立腺肥大症の排尿障害を改善する薬です。
どちらを最初に始めても問題ありませんが、α1遮断薬は起立性低血圧や射精障害が見られることがあるほか、PDE5阻害薬は狭心・心筋梗塞の治療薬である硝酸製剤と一緒に使うことはできません。
薬でもなかなか症状が改善されずお辛い場合は、膀胱の筋肉に直接ボトックスを注入することで過活動膀胱の症状を改善するボトックス膀胱内注入療法を行うこともあります。
これは泌尿器科の専門病院で行う治療となります。
さて、ここまで頻尿の原因となる「過活動膀胱」の症状、原因、検査、治療について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
トイレのことでお悩みの方は意外と多いのではないかと思います。
過活動膀胱の症状は日常生活にも大きな影響を与えます。
夜の眠りも妨げられますし、暗いところで転倒・骨折するなどということにもつながりかねません。
できれば治療をすることで少しでもQOLが改善されることを願います。
ただし薬の治療は副作用も強く出ることがありますので、一人一人の状況にあわせて治療を考えていく必要があります。
気になるようでしたら一度かかりつけの先生にご相談してみてはいかがでしょうか。
それでは、また。
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