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開業から一年を振り返って

[2024.05.31]

当ホームページを見てくださっている患者様、ご家族様、医療関係者の皆様、いつも大変お世話になっております。

 

皆様のおかげで当院 松戸まちなかクリニックはこの6月をもって無事1周年を迎えることとなりました。

 

本日は少しお時間をいただいて、訪問診療をはじめるに至った経緯、そしてこの1年を振り返らせていただきます。

梅雨のイラスト「紫陽花」

 

訪問診療をはじめたきっかけ

訪問診療を始める前、私は感染症や心不全、脱水などで体調が悪くなって入院するご高齢の方を治療する病棟医の立場でした。

 

患者様の中には、元々超高齢であったり、病気への抵抗力や身体能力が落ちている、嚥下の能力が落ちている、というような方がとても多かったです。

 

入院中は病棟の看護師さんが細やかにケアしてくださるので体調も良くなるのですが、「退院してまた元の生活に戻るとおそらく近いうちに再入院になるだろう・・」という状態の人もいらっしゃいました。

 

ただ、せっかく治療して元暮らしていた所に退院できるのに、また調子悪くなって再入院をしたいでしょうか。

 

決してそうは思いません。

 

恐らく誰しもが自分の住み慣れた所で落ち着いて生活を続けたいと思うと思います。

 

前職場のソーシャルワーカーの皆様は非常に優秀な方々で、ケアマネージャーさんや訪問診療の病院、訪問看護ステーションなどと連携をとって「次何かがあっても自宅で診られるうちは自宅で診る」体制作りを積極的にしてくださる方々でした。

 

私も退院前カンファレンスにも参加するなどし、「退院した後もこの患者さんはこんなにたくさんの皆さんに見守られて生活を続けていかれるのか」と感動した覚えがあります。

 

そういった経験を積む中で、自分自身も患者さんが退院した後の生活を支える側になりたい、お一人お一人に向き合って、人生観に寄り添って、できれば患者さんのお看取りの時まで関わっていたい、と思うようになりました。

 

そういった思いを持って本クリニックを開業いたしました。

訪問看護・訪問介護のイラスト(女性)

 

開業してからの1年間

当初はどれだけご依頼いただけるか全くわからず、不安な日々を送っていた時期もありましたが、ありがたいことにこの1年でたくさんの患者様をご紹介・ご依頼いただき、訪問診療に伺うことができております。

 

実際に患者様の生活している場所にお邪魔させていただくと、その方・ご家族の生活背景や病状をより細かく窺い知ることができ、それが診療の質の向上に繋がりうると感じています。

 

毎年心不全で入院を繰り返していた方が今年は心不全をおこさずに冬を越すことができた、退院した直後は寝たきりだった方がみるみる元気になってリビングでご飯が食べられるようになったなど、訪問診療介入前よりもお元気になる患者様の姿を見られることが診療を続ける励みとなっています。

 

ただ一方で、自分の未熟さを突きつけられる瞬間もあります。

 

お一人、自然な形で自宅にて最期を迎えた方がいらっしゃいました。

 

ご家族が患者様の最期に気づいたのは、患者様が亡くなられた直後でした。

 

その患者様のご家族に「亡くなる瞬間に立ち会いたかった。先生にその時期を教えて欲しかった。」と悔しそうにお話いただいたことがあります。

 

頭をがんと殴られた気持ちでした。

 

診療をする中で、私はご家族の「最期の瞬間に、一緒にいたい」という本心を聞き取ることができなかったのです。

 

そのためご家族に患者様が亡くなる時に出すサインについて細かくお伝えできていなかったのです。

 

今でも心が傷む、悔やまれる出来事です。

 

訪問診療は自宅でのお看取りを見据えて関わらせていただくことも少なくありません。

 

その中でご本人の「どう生き続け、どう死にたいか」、ご家族の「最期をどう見守っていきたいか」というお気持ちが治療決定の中核となります。

 

先ほどお話した患者様のご家族には最終的に本人にとっては苦しくなく、よい看取りだった、と仰っていただけましたが、きっといつまでも苦い経験として私の中に残り続けると思います。

 

この気持ちを決して忘れず、引き続き驕らず昂らず、ご本人・ご家族とのコミュニケーションをより密にとるよう、一層心がけてまいります。

 

経営面

こちらは半ば裏話になります。

 

雇われて診療だけしていた時代と違い、何もかも、本当に何もかも、自分でやらなければなりません。

 

物件の選定から始まり、内装工事の手配、電子カルテや検査業者との契約、開業の届出、診療に使う物品や医療機器の準備、各事業所様や近隣の医療機関へのご挨拶回りなどを経てようやく開業に至ります。

 

開業後も、診療業務のみならず、各種種類の作成、医療物品の手配、各事業所様との連絡、レセプト作成、請求業務、スタッフの人選・教育など、特に最初のうちはわからないことだらけで本当に大変でした。

 

色々な方々に助けられ、今ではある程度余裕をもってこなせるようになりましたが、どれも雇われていただけでは知ることのできなかった内容で、こういう風にして日本の医療は回っているんだと身をもって実感できるようになりました。

 

個人経営であるメリットを最大限活かし、今後もより一層、各事業所の皆様とのこまめかつスムーズなコミュニケーションを心がけることにより、どんなことでも気軽にご相談いただけるようなクリニックでありたいと思っています。

電話を掛ける医師のイラスト(女性・笑顔)

 

当院の診療体制

当院は在宅療養支援診療所ではなく、つまり24時間365日往診可能な体制を採っておりません。

 

開業当初からこれは変わっておらず、そして今のところは、その体制の変更は考えていません。

 

「在宅医療といえば24時間365日」がトレンドになっている中、時代に逆行していることは重々承知で、しかしこれには意図があります。

 

平日日中のみならず、夜間や休日も医師が往診できるように勤務・待機する体制とするには、平日日中のみに比べ、時間計算で単純に3-4倍の人・労働力が必要です。

 

この課題をいかにして解決するか、議論され始めて久しいです。

 

さまざまな方法で患者様の申し送りを行いつつ、他院と連携して診療するという体制が近年評価されています。

 

当直輪番制や、夜間休日の往診外注サービスを使ってその体制を構築するという方法もあります。

 

医師の働き方改革も推進されており、そういった意味では、夜間休日の臨時訪問の際は主治医・担当医でない医師が来ることはある程度患者様・ご家族にご理解いただく必要があります。

 

しかし、患者様からしたら、

「いつもの先生でなかったので言いたいことが言えなかった」

「いつもの先生でなかったので持病のことを全然理解してくれていなかった」

「お腹が痛くて往診を依頼したのに内科でない専門外の先生がきて何もしてもらえなかった」

「主治医でないのでわからない、週明けに主治医に連絡するようにと言われた」

など、定期の予定訪問に比べると満足度が低いことは事実です。

 

場合によっては、「いつも違う先生がくるので信頼関係が築けない」という不満に繋がることもあります。

 

そして料金面でも、24時間往診体制とすると夜間や休日に往診しなくともベースの診療費用が上がりますし、夜間や休日に往診した場合にはその往診の料金はさらに高くなります。

 

患者様・ご家族の不安を解消するのも在宅医療の重要な役割と考えていますが、実際、在宅患者様で一部の重症患者様を除き、医学的に、夜間や休日に医師がかけつけないといけない状況というのはそう多くありません。

 

そういった点を考慮すると、訪問できる時間帯には制限があるものの、その範囲内で「いつもの担当医」が責任を持って診療対応する、夜間や休日には訪問看護ステーションの皆様のお力を借り、必要に応じて夜間や休日も電話等で状況報告いただき、「いつもの担当医」が責任をもって対応する、という体制のほうが、信頼関係を築きやすく患者様・ご家族に安心してもらえるのではないかと考えています。

 

当然、すべての在宅患者様にとって当院のような体制がベストだとは思いませんし、合う合わないがあると思います。

 

当院の体制がいいとまではいかなくとも、当院の診療体制にご理解ご納得いただき、医学的にもそれで大丈夫だろうという患者様を中心にこれからもご担当させていただきたいと思っています。

安心しているお婆さんのイラスト

 

最後に

クリニックを開業しここまで継続させていただくにあたり、様々な方のお力添えをいただきました。

 

まずは普段より大変お世話になっているケアマネージャーの皆様、訪問看護ステーションの皆様、訪問調剤薬局の皆様、ヘルパーの皆様、急な病態変化の際に患者様の治療をお引き受けくださる急性期病院の先生方・スタッフの方々、救急隊の皆様。

 

皆様のお力添えがあるからこそ、訪問診療を継続することができております。

 

心よりお礼申し上げますと共に今後とも引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

途中から事務スタッフにも来てもらい、業務を支えてもらっています。

 

非常に助かっています。

 

そして私の家族、特にクリニックのことや実臨床までこなして、いつも全力で助けてくれる主人には感謝の気持ちでいっぱいです。

 

自分のやりたいことを反対せずに見守ってくれる(そしてヘロヘロになっている時に子供の世話や家事をさらっとしてくれる)優しさにいつも甘えさせてもらっています。

 

共働きでただでさえ一緒にいる時間が短く、時にはお迎えの時間がギリギリになってもいつも笑顔で「ママおかえり!」「ママ大好きだよ!」と言ってくれる子供達。

 

彼らの底抜けの笑顔にも支えてもらっています。

 

また、仕事と子育てを両立するにあたり両家両親には公私共に大変助けられています。

 

まだまだ未熟なクリニックではございますが、日々精進して参ります。

 

そして「ここのクリニックに診てもらってよかった」と思っていただけるような診療をこれからも心がけて参ります。

 

1年間ありがとうございました。

 

微力ではありますが、松戸の在宅医療をこれからも支えていきたいと考えています。

 

今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 

それでは、また。

 

 

 

 

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