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[2025.01.04]

年末年始、全国的に厳しい寒さとなっておりますが皆様体調はお変わりございませんでしょうか。

 

本年も引き続き、患者様の「その人らしい生活」を訪問診療医としてサポートできるように精進してまいります。

 

よろしくお願いいたします。

 

 

さて、新年1発目の投稿は、お正月らしい内容にしました。

 

正月太りのイラスト

 

食べ物による窒息

お正月には家族揃って食卓を囲む機会が増えると思います。

 

私はお正月に実家のお雑煮を食べることが楽しみです。

 

訪問診療に伺っているお宅の皆様に半ば冗談で(半ば本気で)「正月はお餅で喉を詰まらせないようにしてくださいね」とお話しています。

 

お餅の窒息事故は実際1月に集中しており、特にお正月三が日に多発していること、皆様ご存知でしたでしょうか。

 

喉に食べ物を詰まらせた人のイラスト

 

消費者庁の分析ではなんと死亡事故の約40%が1月に起こっていたとのことです。

 

食べ物全体で見ると、 65歳以上での窒息死は年間約3800人ほどのようです(2021年 厚生労働省による調査より。)

 

これは交通事故死の約1.8倍もの数です。

 

年々死亡者数は減ってきてはいますが、実は80歳以上の死亡者数はあまり変わっておらず、毎年2500人を超える方が食べ物による窒息で亡くなっています。

 

お餅はもちろん窒息しやすい食べ物ですが、他の食べ物でも喉を詰まらせないように注意する必要があるでしょう。

 

食品の中では餅の他にミニカップゼリー飴類パン肉類魚介類果実類米飯類などが窒息しやすい食事と言われています。

 

カップ入りのゼリーのイラスト 塩パンのイラスト

 

だいたいの食べ物が窒息しやすいでないか、と突っ込みたくなりますが、本当のようです。

 

 

誤嚥のリスク因子

さて、何故歳をとると喉にものが詰まりやすくなるのでしょう?

 

これは加齢による変化食べるものの性質の2点が影響しています。

 

1. 加齢による変化

1. 歯の機能、咀嚼力(噛む力、飲み込む力)の低下

入れ歯になる、奥歯がなくなるなどの理由で顎を支える力が低下した結果、咀嚼力も低下します。

 

入れ歯を外したお爺さんのイラスト

 

また、脳卒中などの病気も咀嚼力に影響を与えます。

 

その結果、食べ物が十分に小さくならないまま喉を通り、うまく飲み込めず喉に残ったままとなってしまいます。

 

2.  咳反射の低下

普通であれば気道内にものが入ってしまった場合、反射的に咳が出て異物を外に出そうという反応が起こります。

 

加齢のため反射が低下すると食べ物を誤飲しても咳が出しにくくなります。

 

咳をしている老人のイラスト

 

3.  唾液量の減少

加齢により作られる唾液の量は減っていきます。

 

その結果、食べたものをスムーズに飲み込みにくくなります。

 

2. 食べるものの性質

表面のやわらかさ弾力性硬さといった食感や、大きさ形状などが関連すると言われています。

 

例えばお餅について考察してみます。

 

お餅は一見やわらかいため噛む力が落ちた高齢の方でも食べやすそうではあります。

 

しかし弾力が強く実は噛み切りにくい食材です。

 

しかもお餅は温度が下がるにしたがって硬くなる性質があります。

 

そのため口の中に入れて喉を通るときには温度が下がり硬くなっています。

 

さらに、お餅は温度が下がるほどくっつきやすくなるので、口の中で餅同士がくっつきやすくなり、喉に貼り付きやすくなります。

 

窒息しやすい食べ物の代表といえるでしょう。

 

 

ものを食べる時の注意点

高齢者、特に訪問診療を受けている方も、喉に詰まらせないように注意が必要というお話をしました。

 

では具体的に、どのように気をつけたらいいでしょうか?

 

① 小さく切り、食べやすい大きさにしましょう

 

② 水分で喉を潤してから食べましょう(ただしよく噛まないうちに食べ物を流し込まないように。詰まる原因になります)

 

③ 一口の量は無理なく食べられる量にしましょう

 

④ ゆっくりとよく噛んでから飲み込むようにしましょう

 

わりと当たり前のことではありますが、どの食品でもこれらの点に注意しながら食事を楽しみましょう。

 

自分は大丈夫という過信が命取り、後悔先に立たずです。

 

 

誤嚥した際の対応

万が一食べ物を誤嚥した時はどうしたらいいでしょうか?

 

一番大事なのはものが詰まらないように対策・予防することですが、万が一ご家族が誤嚥してしまった際の対応についてお話します。

 

まずは窒息がおきているときのサインを見逃さないでください。

 

苦しそうにしている咳き込んでいる顔色が青黒くなるなどが窒息のサインです。

 

喉に食べ物を詰まらせた人のイラスト

 

ただしご高齢の方はそのような反応をせず、黙っていることも少なくありません。

 

まずは大声で人を集めて119番通報をしましょう。

 

119番のイラスト(救急)

 

咳き込んでいる場合、気道が完全には閉塞していない状態です。

 

本人による咳き込みを続けてもらいましょう。

 

咳が弱くなった場合気道が閉塞しかかっていることが考えられます。

 

もし気道が閉塞した(=息をすることができない)場合、3分ほど経つと意識がなくなります。

 

時間が経てば経つほど、死亡のリスクは高まります。

 

 

119番通報をしても救急隊がすぐに到着するとも限りません。

 

本人が呼びかけに反応のある場合、まずは気道内の食べ物の除去を試みたいところです。

 

ご家庭でできる方法は2つあります(今回はご高齢の方向けの対応です。乳幼児や妊婦さんは方法が少し異なりますので注意してください。)

 

1. 背部叩打法(はいぶこうだほう)

左右の肩甲骨の間を手のひらで強く何度も叩きます。4-5回叩いたら様子の確認をし、これを何回か繰り返します。

背部叩打法のイラスト(気道異物除去)

 

2. 腹部突き上げ法(ふくぶつきあげほう)

後ろ側に立って、お腹に両腕を回し、片手で握りこぶしをつくり、もう一方の手をその上に重ねます。みぞおちとおへその中間に両手を当てて、持ち上げるように強く圧迫します。

腹部突き上げ法のイラスト(気道異物除去)

 

窒息した人の口から食べ物が出てくるまでこの2つを繰り返し行います。


腹部突き上げ法はやり方が少し難しいので慣れていない場合は無理に行わず、背部叩打法を繰り返してください。

 

途中で意識がなくなってしまった場合は心肺蘇生法(心臓マッサージ、人工呼吸など)を行う必要があります。

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

「今まで大丈夫だったから」が通用しないのが、この食べ物による窒息です。

 

是非、日頃からリスクを理解し予防に努めていただき、このコラムを読んでいただいている方の周りで食べ物による窒息事故がなくなりますように。

 

今年もよろしくお願いいたします。

 

それでは、また。

 

 

 

 

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